書評『さよなら、俺たち』全男性が耳を塞ぎたくなる、生々しい証言に溢れた、俺たちの”イタい”自分史。
『さよなら、俺たち』
本作はTBSラジオ『アフター6ジャンクション』を通じて知りました。
パーソナリティーの宇多丸さんが「全男性が血の涙を流して読むべき」とおっしゃており、恐る恐る手にとった次第。
概要
俺たちはこのままでいいのか。
これからの時代私たちに必要なことは、甘えや油断、無知や加害者性など、自分の見たくない部分と向き合いながら、「俺たち」にさよならすることだ。
1200人を超える女性の恋愛相談に耳を傾けた結果、見えてきたのは男たちの幼稚で狡猾な姿だった。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表として恋愛と性差の問題を発信してきた著者による、初の本格的ジェンダー・エッセイ集。失恋、家事、性的同意、風俗、夫婦別姓、マンスプレイニングからコロナ離婚まで、様々なテーマに根づく男性問題を掘り下げていく。
Amazonより引用
著者 清田隆之さん
1980年東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。早稲田大学第一文学部卒業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。
『cakes』『WEZZY』『QJWeb』『an・an』『精神看護』『すばる』『現代思想』『yom yom』など幅広いメディアに寄稿。朝日新聞be「悩みのるつぼ」では回答者を務める。桃山商事としての著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)『生き抜くための恋愛相談』『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(共にイースト・プレス)、トミヤマユキコ氏との共著に『大学1年生の歩き方』(左右社)、単著に『よかれと思ってやったのに─男たちの「失敗学」入門』(晶文社)がある。
清田さんは「恋バナ収集ユニット」として活動されている・・・ってなんだそれ!?という人物。
前述のラジオ『アフター6ジャンクション』では男性からの無神経・性欲剥き出しのLINEをフィーチャーした「クソLINE特集」というめちゃくちゃ面白い放送を届けてくれました。
感想
異性愛者の全男性が耳を塞ぎたくなる、生々しい証言に溢れた、”イタい”俺たちの自分史。
なんで、なんで俺の過去が書籍化されているんだ・・・。
いやー、正直きついところは多々ある。
「男を一括りにするな!」
と、本書でも示されるような類型的拒否反応を示してしまいそうになります。
しかし、本書がフェミニズム的観点から突きつける男性の初歩的NG行動についての理解を深めることは、ショック療法かも知れませんが、決して無駄にはならないと思います。
それどころか、俺たち男性が抱える、閉塞的な生きづらさを、逆側から照らし出し、そして透かし見る、さながらヘッドライトのような金言に溢れています。
本書を読んで「あれはだめ」「これはだめ」と言われた男性は「じゃあどうすればいいの?」と、明確な対案が示されないことにストレスを感じるかも知れません。
しかし人間関係で、一人ひとりに向き合わず、普遍的に通じる正解などそもそもあるのでしょうか?
対女性、対他人とのコミュニケーションについて、「向き合わなければいけない」というスタートラインに立つことができること。それだけでも、自分を含めた多くの男性にとっては大きな進歩となるに違いないのだと思います。