映画『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』アメリカン・ドリームのオーバードーズに注意
『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』
高橋ヨシキさんがNHKラジオの「シネマ・ストリップ」で紹介されていて興味を持った本作。
まずはあらすじの紹介から。
「トランスフォーマー」シリーズなどのヒットメーカー、マイケル・ベイ監督が、「テッド」のマーク・ウォールバーグ&「ワイルド・スピード」シリーズのドウェイン・ジョンソン共演で描いたクライムドラマ。
マイアミで暮らすダニエルは、筋トレだけが生きがいの冴えないスポーツジムのトレーナー。そんな自分の人生に嫌気が差したダニエルは、ジムの常連客である裕福なビジネスマンの誘拐を企む。同僚のエイドリアンや前科者のポールらと組んで計画を実行に移し、なんとか大金を奪うことに成功したダニエルだったが、そんな彼らの前に秘密捜査官が現われ……。
2013年製作/129分/アメリカ
原題:Pain & Gain映画.comより
驚いたのは、この映画が実話であるというところ。
こんな酷いことはさすがにないだろう・・・と唖然とするような出来事のオンパレードで、もうフィクションだろうと思っていると
「これでも、まだ実話である」
という注が付きます。信じられないようなことをする輩がいるものです・・・
キャスト
主演はマーク・ウォールバーグ。
「ザ・ファイター」「テッド」「ディパーテッド」など話題作に多数出演。実は彼は昔は相当なワルだったようで、25回もの逮捕歴があるとか。体もすごくて、筋肉ムキムキです。
監督
監督はマイケル・ベイ。「アルマゲドン」や「トランスフォーマー」などド派手な大作映画を多く監督されている方です。
最近ではNetflixオリジナルの傑作アクションコメディ『6アンダーグラウンド』を監督されています。
https://www.netflix.com/title/81001887
要素の多い複雑なド派手アクションをしっかり撮る腕のある監督さんです。
感想
まずはTwitterの短評から。
『#ペインアンドゲイン 』
— ピータンカッシング@映 画 (@FN2199_traitor) 2020年8月5日
「結果至上主義」「成功が全て」的な価値観に洗脳されきったマッチョな男たちが犯罪に手を染めていく。
これが実話だというのだから恐ろしい。
ブラックすぎて笑っていいのか怖がればいいのか分からないが、結構哲学的に思える部分もあった。#映画好きと繋がりたい pic.twitter.com/NJQ5iZnGii
社会的に成功することや、行動力を過度に重視する自己啓発的なメッセージに乗せられて破滅していく主人公たちが痛々しい。
これは笑っていいのか・・・?
「Don't be a Don'ter . Do be a Doer!」と唱える自己啓発のセミナー講師が出てきて主人公たちに感銘を与えています。今の日本社会でもこういうノリで生きている人がたくさんいるよなあ、と。
そんな「Doer」になって金持ちになるべく、主人公たちは強盗を計画します。
まっとうなビジネスで稼げよ、と普通は思います。共犯者たちも最初は「正気の沙汰じゃない」と言っていますが、主人公にうまく丸め込まれてしまいます。
そのようにスタートからおかしいのですが、実行する最初の侵入作戦も、まあ杜撰の極み。計画は「裏口から侵入しよう」レベルでお粗末。下調べもなしにとにかく「実行」する。「Don't be a Don'ter . Do be a Doer!」ですね。案の定、なんの下調べもしていないものだから「やべえ、パーティーやってて人がたくさんいる。撤収!」とすぐに想定外の事態に遭遇し逃げ帰ります。
主人公たちは、ここで立ち止まったり、何かに気がつければまだ良かったと思うんです。
「そもそも成功のために強盗するなんて間違っている」とか、
「しっかり調査と計画をしてから実行しよう」でも。
しかし、彼らは立ち止まらない、振り返らない。
「Don't be a Don'ter . Do be a Doer!」
ですから。
よくPDCA(計画して、やってみて、振り返って、またやってみよう)と言われますが彼らにはその視点が全くない。
次々に新しい作戦を、よく考えずに実行しては失敗し、行き当たりばったりな行動を続けて、とんでもない事態に発展していきます。
この映画、
- 実話ベースの犯罪映画
- 犯行が素人丸出しで間抜け
- 主人公たちが「何者かになるために」犯罪に手を染める
という点では『アメリカン・アニマルズ』に非常によく似ていると思います。
こちらの映画では、うだつの上がらない大学生活を送っていた主人公たちが、貴重な本を大学の図書館から盗み出すという罪を犯します。こちらは半分が再現ドラマで、半分はなんと、実際の犯人たちが顔出しで出演しています。夢に目が眩むあまりに犯した罪と、その大きな代償を今も払い続ける彼らの現在が描かれ、重い後味が残る傑作です。
「成功する」「金持ちになる」「有名になる」
こうした考えに強く取り憑かれて犯罪に走る、というのは実は『ペイン&ゲイン』の彼らだけに限った話ではないんですね。
まとめ
目標を持って努力することは大事だし、
社会的な成功を目指すのも悪いことではないと思います。
ですが人生の価値を、社会的に成功したかという一点で評価しようとするところまで極端になってしまうと、本作の主人公たちのように(あるいはアメリカン・アニマルズの主人公たちのように)遅かれ早かれ破滅が待っている。
そういうメッセージを投げかける映画だと思いました。
満足度
5点中3点
ありがとうございましたー。ではまた!