旅の終わり、映画のはじまり

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映画『ファントム・スレッド』感想

ファントム・スレッド』これは傑作でした。

 主人公はイギリスのオートクチュール仕立て屋として大成功しているウッドコック。町山さんの解説によれば「木製のちこ」らしい。演じるのは名優ダニエル・デイ・ルイス。この映画のために洋服作りを習い、スーツなどを作れるようになったんだそうです。監督はポール・トーマス・アンダーソンヒッチコックレベッカなどを参考に本作を構想したそうです。そのへんの話もYouTubePodcastで面白い話がたくさん転がっています。

 主人公が朝起きて支度をする場面と、お店の準備をするスタッフたちの場面が並行して描かれて行きます。主人公とスタッフたちがすれ違う。最低限の挨拶は交わすけれども笑顔はないし他の言葉も交わさない。これを見て推測したのは、この職場は結構厳しく、仕事には全力だけど人間関係は希薄な職場なんだろうな、ということ。主人公は成功者ではあるけれど、スタッフたちから慕われている訳ではなさそうです。

 主人公が田舎の別荘にいき飲食店に立ち寄ります。そこで出会うのが本当の主人公のアルマ。なんかデカいし、ゴツめで、テーブルにぶつかるし皿の持ち方なんかもまーガサツそうなんですよ。普通は映画のヒロインにならない感じの。しかし主人公は彼女を一発で気に入ります。その場で夕食に誘い、まさかの快諾。いやいくらハンサムなイケオジだからって展開が急だなおい、とは思いましたが多分そこは受け入れた方が楽しめるんだろうと思い、先の物語に集中することに。ついでにこのおじさんどんだけ食べるんだよ、とも思いました。普通の人の3人ぶんぐらいの量を朝食で平らげます。

 連れてこられたアルマ。食事をする彼女をじーっと見つめるダニエル・デイ・ルイス。これだけでも十分気持ち悪いのですが、「僕は自分の服の胸に母親の遺髪を入れている」など戦慄のマザコン発言連発。アルマも「こいつやべえ」って顔はするものの、服を脱いで採寸に応じます。二人きりだからロマンチックな想像もしていると思います。そこで何の躊躇いもなく登場するまさかの姉。ウッドコックも姉はそこにいて当然、という感じで意に介しません。胸の採寸をするときやや抵抗感のある表情をするアルマ。「胸がないね」とデリカシーゼロの直球発言をするウッドコック。こいつマジかよ。

 アルマは住み込みでウッドコックのマネキン役として働くことになります。しかし過去何人もがその役割を引き受け、ウッドコックと親密になりすぎると捨てられてきた模様。その仕立て屋はウッドコックと姉の二人が中心かつ全てで、それ以外の人物は仕事のための駒でしかなかったのです。

 そこで真の主人公アルマはどうするのか?女王陛下のお気に入りのような感じになるのか?と思ったらまさかの・・・キノコ作戦ですよ。困ったときのキノコ。スーパーマリオもびっくりですよ。女王陛下のお気に入りでも確か毒盛ってたと思いますが、毒のあるキノコを細かく切ってすり潰し、ウッドコックしか飲まないお茶のポットに。ウッドコックは体調に異常を来たし、明日にはベルギーの王族に送らなければならないドレスに倒れ込みます。アルマに看病されるウッドコック。ここで笑ったのは、スタッフたちはウッドコックのことは全く心配してなくて、ドレスが汚れたり破損したことを中心に姉に報告。姉は「え?誰が倒れたって?」と聞き返す場面は最高でした。

 さて看病された経験で心境が変化したウッドコックはアルマとの結婚を決めます。しかし結婚したはいいものの、年齢も育ちも全然違う二人の結婚は最初からすれ違いだらけ。ウッドコックも「あー失敗した」って感じをモロに出してます。でもアルマの方が駆け引きがうまい。大晦日のパーティーに一人で繰り出したアルマを結局迎えにいくハメになるウッドコック。まんまとアルマに振り回されて行きます。

 ここから最終的に、ウッドコックはアルマに完全敗北することになります。それはここでネタバレするのはもったいないので省略します。このクライマックスで本作は一気に大傑作になったと思いました。

 

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