旅の終わり、映画のはじまり

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映画『透明人間』2020年を代表する作品になること間違いなし。傑作ホラー映画。

『透明人間』

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 管理人は怖い映画が苦手。基本的にホラー映画はスルーしています。

 ですが、本作は各メディアやツイッターでの評判がとても良かったのです。

 迷った挙句、劇場に観に行った次第。

 

作品情報とあらすじ

 あらすじは映画.comさんから引用します。
 

富豪の天才科学者エイドリアンに束縛される生活を送るセシリアは、ある夜、計画的に脱出を図る。悲しみに暮れるエイドリアンは手首を切って自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残す。しかし、セシリアは彼の死を疑っていた。やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、命まで脅かされるように。見えない何かに襲われていることを証明しようとするセシリアだったが……

https://eiga.com/movie/92766/


 もともと、本作は『ダーク・ユニバース』というシリーズの一つとして企画されていました。

 しかしその『ダーク・ユニバース』の一作目『ザ・マミー』が不発に終わり、本作は単体の作品として作られましたという経緯があります。 


監督


 本作の監督はリー・ワネル

 大人気ホラー『ソウ』シリーズの脚本や製作総指揮を歴任。1977年生まれで現在(2020年時点)43歳と若いです。監督作は本作で3作目。

 今後の活躍も非常に楽しみな監督です。


キャスト


 主演はエリザベス・モスさん。彼女はドラマシリーズ『ハンドメイズテイル』での主演が有名です。

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 ホラー映画ではジョーダン・ピール監督の『アス』のお友達一家の女性役で出演されていました。


以下、完全ネタバレありの感想になります。


この映画の結末の重大な部分に触れております。


未見の方は、ぜひ映画をご覧になってから続きをお読みください。

 

感想


 結論:めちゃくちゃ面白い!ホラー映画の新たな傑作が誕生。
 

 間違いなく映画館で見て欲しい作品でもあります。


<好きだったポイント>


・音の演出がすごい。 

 冒頭でやたらと強調される波の音による緊迫感の演出、主人公が精神的に追い詰められると重低音が高い圧で流されるなど、場面の感情の流れを音で作っていく演出が多用されており、自然と映画の世界に没入させられて行きます。

 静かな足音や、透明人間スーツの発する独特の音が醸す恐怖感、突然の料理の音による脅かし演出などにも、まんまとやられてしまいます。

 この感じは劇場の大音量・高音質が最適です。

 もし今後配信などで鑑賞される場合はぜひヘッドホンなどを着用することをお勧めします。


・カメラワークによる恐怖 

 何もない空間にカメラがパンする。そして元の場所に戻る。

 観客は「そこに何かいるのか?」「何か起こるのか?」と想像力を働かせ、怖がります。

 そして、何も起こらなかったりする。

 観客の予想の裏をかき、楽しませてくるカメラワーク。 

 ふとした瞬間に、「あれ、この視点はもしかして透明人間の視点なのでは・・・?」と思わせるようなカットが挟まれる。

 「い、いる!逃げて!!」と叫びたくなる恐怖がすごいです。


・主人公のとんでもない追い詰められぶりと、ラストの爽快感。 

 主人公は親友からの信頼を失い、唯一の肉親と思われる妹を殺害され、殺人の濡れ衣を着せられ、精神病院に入れられ、エイドリアンの子を望んでいないのに妊娠していることを知らされる、とまさにどん底に追い詰められてしまいます。
 だからこそ、そこからの薄氷を踏むような主人公の復讐劇が始まったときのワクワク感がたまらないです。そしてこの復讐劇も観客の「あ、結局こうなるのね」という予想をしっかり裏切って見せてくれます。復讐劇が成就するカタルシスもしっかりあります。主人公の捨て台詞が気持ち良く、まさにこの映画自体が観客を楽しませるための「サプラ~イズ」に満ちたエンディングを見せてくれるのです。


<考えたいポイント>


・本当にエイドリアンが犯人だったのか問題 

 この映画はホラー映画であり、サスペンス映画ではないです。ですので犯人探しは深堀する必要はないと思います。 

 ですがちょっと考えたいのは、「エイドリアンがすべての黒幕」という主人公の主張を裏付ける客観的な証拠は何もないという点です。客観的に見ればトムが犯人だった、となります。

 しかし、透明人間スーツの開発者で兄より知力・財力があるエイドリアンが兄に操られていたというのは考えづらい。

 主観的な印象と、客観的な証拠の対立。映画の中ではそこに決定打となる客観的な事実はついに提示されないため、ネット上でも真犯人について議論が分かれています。  

 ここからは管理人なりの解釈ですが、やはり真の黒幕はエイドリアンだと思います。そしてこの映画が伝えた本質的な恐怖というのは「客観的であるはずのエビデンス」が真実を隠し、歪めるために使われてしまうことの恐ろしさなのではないか、というのが今の時点での管理人なりの解釈です。


 ・透明スーツをクローゼットに隠しておくことについて 

 主人公はウーバーに乗ってエイドリアンの豪邸に戻ります(ちなみに最初はウーバーだと分からず、また別のお友達かな?と思って見ていました。余談ですが、ウーバーの運転手は乗客が豪邸に不法侵入しても特に疑問を抱かなかったのでしょうか)。 

 そして透明人間スーツを奪って、持って帰るのかと思いきや、クローゼットにしまいます。この時点で、主人公はエイドリアンとここで対決することになると予想をしています。ということは、いったんはエイドリアンの嫌がらせに負け、エイドリアンが透明人間としてではなく生きた姿で再び自分と対面することになることも予想していることになります(透明なままだと、こちらが透明になっても復讐できない)。つまり、最初はずっと負けっぱなしに思えた主人公ですが、実はこのシーン(豪邸に最初に戻るシーン)以降はある程度、いったんは負けることを見越して復讐のチャンスをずっと狙っていたことになります。それなのに、そこからさらに妹を殺され、妊娠まで発覚するなど、最悪の自体が次々と起こるわけですが、実は復讐のための仕込みはできていたんですね。


 ・バトルシーンについて 

 直前で主人公は万年筆で自分の手首の動脈を切りますが、その後のバトルシーンでは傷もなければ流血もしていないのは不自然に感じました。

 


 ・透明人間スーツの管理が杜撰 

 悪用されれば非常に危険な透明人間スーツにも関わらず、主人公が1着隠していても気がつかないほど、杜撰に管理されていたのか・・・という疑問は残りました。

 

最後に


 繰り返しになりますが、できるだけ映画館で、できるだけいい音響でご覧になるのがお勧めの映画でございます!

満足度 

 5点満点中4

 

以上です。ありがとうございました!


映画『透明人間』特別映像

 

 

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  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: Prime Video
 

 

 

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