旅の終わり、映画のはじまり

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【ネタバレ有】『テネット』徹底考察【一万字超】

クリストファー・ノーラン監督

『テネット』

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 筆者は本作を 

  •  初回を通常のIMAX
  •  2回目にIMAX レーザーGTで

  合計2回鑑賞し、パンフレットも購入して読みました。

 感想としては、かなり満足できました。

 素晴らしい作品だったと思います。

 

 以下では大小様々な論点を思いつくままに論じています。

 盛大なネタバレ記事です。

未見の方は鑑賞後にご覧くださいませ。

 目次です。

SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS

 パンフレットに載っていた情報なのですが、これはラテン語の有名な回文で「農夫のアレポは馬鋤きを引いて仕事をする」という意味だそうです。

 SATORは敵の名前、アレポはゴヤの贋作を描いた画家、TENETは作品名、OPERAは本作の最初のシーン、ROTASは絵を保管している怪しげな会社の名前、とこの回文の全ての要素が本作に散りばめられています。

 ちなみに途中まで本作のタイトルは「メリーゴーランド」だったそうで、この回文を見つけた人は本当に偉い。

 

 キエフ国立オペラ劇場

 冒頭のシーン。いきなりの急展開でどんどん引き込まれていく最高のオープニングシーンだったと思います。

臨場感の演出

 オーケストラの演奏前に楽器を鳴らすシーンで、映画の観客にも

これから生演奏が始まるんだ

 という臨場感を体感レベルで植え付けることに成功しています。仮にこれが演奏の途中のシーンから始まっていたらどうでしょうか。おそらく、ここまでの臨場感は出なかったでしょう。

ワッペン問題

 そしてテロリストが突入する。

 特殊部隊があり得ない早さで到着する。これは事前に知っていたに違いない。

 「アメリカ人を起こせ」

 主人公の顔。寝てたの?   まあいいや。

 そしてやってきたキエフの部隊の種類を確認してそれっぽいワッペンをつける。

 え、それだけ?

 なんとなくの知識ですけど、部隊によって制服、武器、靴、その他装備、諸々違うと思うんですけど。ワッペンをつけるだけで偽装できちゃうという設定。気にしないことにしました。

 

本気の居眠り

 何やらガスを劇場内に送る特殊部隊。劇場内の観客はどんどん眠りに落ちていきます。

 このシーンは「かなりの長い時間、これだけの人数が頑張って居眠りしていたんだな」と思うとエキストラの人たちの大変さが忍ばれる。だって、役者たちが頑張ってアクションしても、観客のエキストラが一人でもくしゃみとかしようものなら、NGになっちゃう訳じゃないですか。デンゼル・ワシントンの息子とロバート・パティンソンのベストアクトも台無しにしてしまうかもしれないというプレッシャー。これは本当に大変だったはず。トイレもいけないし。

 と同時に、これだけの大人数が本気の居眠りを決め込んでいる所はやはり「めちゃくちゃ滑稽だな」とも思ってしまったのもまた確かではあるのですが・・・。

 

早速、理解不能

 主人公(この時点ではCIAのスパイ)は潜入しているっぽい別のスパイ救出と、プルトニウムの奪還のために劇場に来たらしきことが分かります(初見では展開が早すぎて、なんとなくの理解しかできませんでした)。

プルトニウムの外見問題

 クロークに置いてあるプルトニウムを発見する。

 とても違和感のある保管方法と外見ではあるのだが、『ミッション・インポッシブル:フォールアウト』でも同じ違和感を飲み込んだ経験がありここは難なくクリア(画像はミッション・インポッシブルのもの)。

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爆弾を見落とさない主人公

 特殊部隊はテロリストを退治すると同時に劇場自体を観客もろとも爆破しようと時限爆弾をセットしている(これも初見のときは特殊部隊にテロリストが混じっているのかな?と勘違いしてました)。

 これに気がついた主人公はあの広い劇場全体にある時限爆弾を一つも見落とさず、全て回収しボストンバッグに入れるという神業を発揮します。これ超能力に近く、テネットと同時にそっちの謎も解明して欲しい。

伏線を見落とす筆者

 爆弾を回収しているところで本当の特殊部隊にバレ、殺されそうになりますが、ギリギリのところで謎の男に助けられる。

 謎の男(実はニール)のカバンには(分かってみれば)意味ありげなお守りのようなものがぶら下がっているのですが、初見時には消化不良の情報がすでに脳内山積みで、頭はパンク状態。完全に見落としていました。

 

 無事にミッションが終わったと思ったらなぜか失敗しており、拷問にかけられる主人公。なぜ失敗したのかは二回観た今でも分かっていません(お願い:分かる方、コメント欄で教えてください・・・。)

  敵のスキをついて自殺用のカプセルを噛む主人公。

 

 TENET 

 

 タイトルがドーン。

  

トロンヘイム海上

 死んだかと思った主人公が目を覚ます。

テスト

 知らないおじさんが登場。「あれはテストだった」と言う。

 どこからどこまでをテストだと言っているのか。拷問だけ?それともテロ全体?これも、いまだによく分からないままです。

風車

 大きな海上風車が映される。

 これは・・・ノーランが撮りたくて撮ったヤツだな!話の筋とは関係なさそうだな!

 と思いテンションが上がる。スクリーンが大きいことの利点を最大限に引き出す映像だ。

活かされない超能力描写

 テネットの秘密を聞かされる主人公。懸垂をする主人公。

 科学者の元に行き、詳しい説明を聞きます。時間の逆行。テネットの目的は第三次世界大戦を防ぐこと。核の脅威よりさらに恐ろしいことが起こる可能性があると。

 壁から飛んできてトリガーに収まったり、主人公の掌に吸い込まれる銃弾の描写。彼が「時間の逆行をイメージする」ことによってテネットを操る超能力的な描写はかっこいい!ですが、その後の展開では全く出てこないのはちょっと残念。

考えて

 さて、ここで科学者は

「考えるな、感じろ」

と言う。

 

ごもっともな気もするが

「それが科学者の言うことか?」

と少し思う。

「弾丸の成分を調べれば、どこで作られたものか分かる」

と主人公に指摘されて気がつく科学者。

やっぱりちょっと大丈夫か、この人。それは科学者が気がつくべきところではないのか。思った通り、考えることは大事だった。

 以上は冗談で、この「考えるな、感じろ」は監督から観客へのメッセージである。

 

ムンバイ・ロンドン

ややこしや

 この辺からドンドン、話がややこしくなっていく。

 

 サンジェイ・シンと言う武器商人に会う

実は黒幕は妻のプリヤで

実は黒幕はセイターって言うロシアの武器商人で

→セイターにあうために妻のキャットに接近

→キャットの協力を得るために美術品を盗む必要

→盗むためにオスロ

 

ここまで話を複雑にする必要あります?

 

 と言いたくなるような展開。

 

 バンジージャンプのアクションは良かったです。予告編を観た段階では、時間の逆回転をしているのかと思っていたら、実は普通に順行だったと言う。メイキングを見ると、これも実際にスタントをやっていて、なかなかの迫力でした。

 

オスロ空港

 オスロ空港は「フリーポート」となっており、美術品や骨董品が無課税でトランジットできると言う。実際にそんなものが存在するのかは知らないのですが、この部分はなんだか日産の○ルロス・ゴーンさんの逃亡劇を思い出すなどしました。

目的を忘れる

 ニールを空港に下見に行かせた主人公は「防火設備をよく確認するように」と指示する。

 しっかり確認するニール。防火設備は特殊なガスが室内に充満する仕組みになっており、10秒以内に脱出しないと人間は窒息してしまうことが分かった。なるほど、これはサスペンスを生み出す要素になりそうだ。

 ところで、目的はゴヤの贋作を盗み出すことのはずだが、それの保管場所は全く調べていない。

 

飛行機大爆破

 ゴヤの贋作を盗むために警備の目を誤魔化すために(また「ために」)、飛行機をジャックして建物に突っ込ませるという(飛行機だけに)発想の飛躍にもほどがある作戦を実行する。

 さらに、監視の目を欺くために金塊をばら撒くと言う。「誰も飛行機のことは気にしないよ」とのこと。そんな馬鹿なとは思いつつ、ここまでめちゃくちゃな方向にしっかりと振り切った決断をしたのは本当に最高です。

 このシーンは実際に中古の大型機を買ってきて撮影されているらしく、迫力がすごい。ゆっくりと飛行機が滑走する下で自動車がボコボコになっていくのも良かった〜。

 

異次元の格闘シーン

 無事に飛行機が建物に突っ込み、警報装置と消火設備が作動。

 客をおいて真っ先に職員が逃げ、しめしめという顔をした主人公とニール。あちこちのドアをピッキングしていくが、やはりゴヤの贋作を探しているようには見えない。

 そうこうしているうちに、回転扉に出くわし、奇妙な動きをする男との格闘に突入。この格闘シーンはどうやって撮ったのか気になる、全く観たことがない素晴らしいシーンでした。これは元プロのアメフト選手でもある主演のジョン・デイヴィッド・ワシントンの抜群の身体能力によるところも大きいはずです(他のキャラクターではここまでの格闘シーンはありません)。

 さて、ここでニールは戦っている相手の顔を見て戦うのをやめ、さらに主人公が相手を殺そうとするのを止めます。ここでおそらく多くの観客が「あ、そういうことね」となんとなく重要な結末に気がつくことになるのですが、この作品はたとえそれが分かっても、それが明かされるのちの映像体験が物凄いから全く問題ないところが素晴らしいです。

 

アマルフィ

 あのアマルフィです。織田裕二が出てきてTimeToSayGoodbyeが聞こえてきそうです。

 ゴヤの贋作の奪還に失敗した(そもそも奪還する気があったのか怪しい)主人公は、悪びれずに再びキャットの前に姿を現します。こいつは・・・サイコパス・・・。

 なんやかんやでセイターの夕食に招待されるが、すぐに帰る主人公。セーリングセーリングの場面は後述)で殺されかけたセイターを助け、警察が保管しているプルトニウムの強奪へ向かう。

 

タリン

超絶技巧のカー・アクション

 装甲車を襲うシーンとカーチェイスのため、3週間の通行止めを行って撮影されたシーンは圧巻。

 装甲車と前後の車を豪快に破壊して行われる強奪シーンは実物にこだわるクリストファー・ノーランの真骨頂。実際にあれだけの台数の車を走らせ、役者にその上で実際に事故なく演技をさせるための準備と計画の大変さを考えるだけでも気が遠くなりそうだ。

 奪ったあとのカーチェイスシーンは、逆走する車に襲われるという、おそらくまだ誰も見たことのないシーンだ。撮影は実際にバックで車を走らせているのだろうが、ドライバーもこんな運転は初めてだったに違いない。

 カメラも『フォードVSフェラーリ』のような車体のしたの方から撮影するカットが挟まれ、スピード感と臨場感を掻き立てている。非常に豪華である。

手品師

 さて、強奪に成功したプルトニウムだが、キャットを人質にしたセイターに奪われてしまう・・・と思ったらオレンジの箱を投げる瞬間、あいだに割り込んできたもう一台の車にプルトニウム本体を投げ入れている。まるで手品だ。画面にもチラッとだけ映るのだが、これは初見時には全く気がつかなかった。いくらなんでも説明不足すぎやしないか。

 さてキャットを助けたあと、プルトニウムの箱が空だったことに激怒したセイターに、捕らえられる主人公とキャット(初見時は怒っている理由が分からず全くの意味不明だった。なお、ここが分からないとこの後の展開も芋づる式に意味不明になっていったことは今でもない)。

 キャットが撃たれる。

 このシーンは非常に緊張感があった。壁に残る弾痕が震え、逆再生される音声が時間差で順行のこちらに聞こえてくる。よくこんなことを思いつくな、と驚く。

 そこで助けが来る。ニールも一緒だ。もっと早くみんなを連れてくれば良かったのでは?と思わなくもない。

 キャットを助けるには時間を逆行して治療をしなければならない。主人公たちは逆行世界に向かう。

 

オスロ

スーパーボール

 主人公は先ほどのカーチェイスで別の車に放り込んだプルトニウムを回収するため、逆行する世界の外に向かう。

 しかし、驚いたことにプルトニウムはせっかく放り込んだ車の中でピョンピョンと跳ね回り、最終的にはセイターの車の中に飛んでいってしまっていた・・・。

 初見時にはそもそもの前提が分かっていなかったので意味不明でした(「チームプレイか」の意味も???でした)。

 しかし分かったら分かったで、「そんなのアリかよ」という。どんな偶然なんだ。プルトニウムって見た感じ結構重そうだしあんなに車内でバウンドする?スーパーボールかよ!

 

氷と炎の歌

 横転した車に火を付けられて、火達磨になった主人公と車は凍りつきます。

 確かに事前にそういう設定も説明されていましたが、どう考えてもおかしい。時間が逆になっても燃える前の温度に戻るだけだし、燃焼という現象がなければ、逆行世界の車のエンジンはどうやって動いてるんだ。

 

今、ふたたびの空港へ

 オスロの空港から再び順行の世界に戻ろうとする。なぜわざわざそこを選ぶ必要があったのかは、まだ理解できていません(お願い:分かる方はコメント欄で教えていただけると助かります)。  

 そこで今度は過去の自分との戦闘が始まる。さっき見たシーンのはずだが、逆行世界から見るだけでとても見応えのあるシーンに仕上がっている。

 

マグネヴァイキング

アルゴリズム

 実はプルトニウムの正体は「アルゴリズム」という未来人が発明した機械を9つに分割したものの一つだった。アルゴリズムが全て揃い、発動されると世界全体の時間が逆行し、順行世界は一瞬にして消滅するという。

 そう。この映画では、プルトニウムプルトニウムではなく、アルゴリズムアルゴリズムじゃないのである。

 

セイターの企み

 さて、キャットは助かったが、アルゴリズムは全てセイターの手に渡った。

 セイターは自分の脈拍とアルゴリズムの起爆を同期しており、彼が死ねばアルゴリズムが起動し世界が滅ぶ。さらに彼は、末期の膵臓癌を患っており余命幾ばくもなく

「どうせ死ぬなら自殺して同時に一緒世界を滅ぼしてしまおう」

としていることが分かる。

 なんとセカイ系でサノスなおじさんなんだろう。困った。

セイターの過去 

 セイターはスタルスク12という地図から消された街の出身。冷戦時代の若き日のセイターは、そこで原子力施設の事故の後処理を行っている際に、未来人が現代に送ったタイムカプセルを発見。そこには未来の自分が署名したビジネスの契約書や金塊が入っていた。以後、未来人から金塊と未来の情報の提供を受けてきたことがセイターの成功の理由だったのだ。

【考察】未来人はなぜセイターを選んだのか

 おそらく未来人は「成功に貪欲であり・ちょうどいい頃合いに病気にかかり・自殺した人物」としてセイターを選んでいる。セイター自身は未来人と関わりを続けたことが放射線被曝と癌という結果につながったと思っているが、未来人が彼を選んだことを考えれば、それがなかったとしてもセイターは遅かれ早かれ病気になり自殺を選んでいた、と考えられる。それが彼の運命だったのだ。

祖父のパラドックス

 祖父のパラドックスとは、祖先を殺しても子孫である未来人は無傷である、というパラドックス(矛盾)だ。

 これに関しては、未来人の中でもニールやアイブスは祖父のパラドックスに関し、過去を滅ぼしたら未来も道連れであると考えている。筆者もそう考えている。パラドックス(矛盾)を信じるのは愚かだし、現実逃避だ。

 一方でニールの口から語られるように、未来人の中には、先祖を殺しても自分たちは無傷だ、と考える人間がいる。「矛盾しているが、そう信じているのだから仕方ない」のだという。そうした考えを持つ未来人がセイターを通じて過去に隠されたアルゴリズムを起動させ、世界の時間を逆行させ、過去を滅ぼそうとしているのだ。

【考察】第三次世界大戦の正体

 つまり『テネット』の中で語られる第三次世界大戦とは、

  • 世界全体の時間を逆行させて過去が滅べば未来も道連れで滅ぶと考える反・祖父のパラドックス
  • 世界全体の時間を逆行させることで未来の問題(環境問題など)が解決できると考える祖父のパラドックス

 の二つの対立するイデオロギーの間の戦いなのである。

 これは現在のアメリカで言えば、

などを象徴していると言って良い。

そして、理性や知性の側に立つことがTENET。

スタルクス12

 話を先に進めます。

超リアルなゲーム感覚

 最後のスタルクス12での戦いのシーンは本当に圧巻。このシーンは一番、IMAXレーザーGTの威力が発揮されるシーンでもあった。

 画面の情報はめちゃくちゃ多い。

  • 敵/味方の軸と順行/逆行の軸で分かれ
  • ニールは途中で順行と逆行を行ったり来たりするし
  • 更にベトナムでのセイターとキャットの騙し合いのシーンがカットバックされる

 以上により複雑極まりないシーンとなっている。しかし、二度目に見たときはしっかり情報も整理されて物凄い没入感を味わうことができた。感覚としては複雑なVR戦争ゲームの中に放り込まれたようだった。『1917』よりもこっちの方がより臨場感があったように思う。本作のベストシーンを上げるとすれば、この戦闘を推したい。

 

可哀想な建物

 パンフレットにも乗っているのだが、復活した建物がすぐに破壊されるシーンがある。これは少し笑った。

 怖かったのは、瓦礫が逆行して建物に戻る時に人が巻き込まれてしまうシーン。これは本当に恐ろしく、ホラー的だった。

 

ニール

 この戦いに勝利できたのは、なんと言ってもニールのおかげだ。

 そして明かされる秘密。

 このあたりは、ちょっと予想の範囲ではあったので驚きはしなかったが、なんとも切ない終わり方だった。2回目に見たときは分かれのシーンで鳥肌が立った。

 

The Protagonist

 主人公自身がテネットの黒幕だったことが明かされる。

 展開としてはターミネーターなどを見慣れた観客にとってはあまり驚きではなかったと思う。

 本作の肝はなんと言ってもIMAXと圧倒的な物量、そしてクリストファー・ノーランの狂気による映像体験。

 

*************************** 

ここまでで、ストーリーに沿った話は以上です。

ここからは、別の切り口でいくつか余談を。

セイター(ケネス・ブラナー)のロシア訛り英語問題

 今回の悪役(antagonist)はロシア出身の武器商人セイター。演じるのはイギリス人俳優のケネス・ブラナー

 

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 彼は自身が監督・主演の『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』(今年公開)ではフランス語訛りの英語でエルキュール・ポワロを演じていました。

 本作ではロシア訛りの英語を喋っており、英語ネイティブでない筆者にはそれっぽく聞こえました。

 ただ、ある重要な場面で、素人の耳にも明らかに訛りがない普通の英語に戻っちゃってるように感じたところが有りました。

 問題の場面は、妻のキャッツにキレて

 「俺の本性は、虎だ!」とセイターが新海誠監督もびっくりの中二病発言&大激怒をするところ。

 訛りが消しとんで普通のイギリス人の英語っぽく聞こえてしまい、「俺の本性は、イギリス人俳優だ!」と別の本性が垣間見えてしまっているような気がしたのでした。

キャット(エリザベス・デビッキ)の性格

 本作のヒロインである彼女。

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 彼女はかなり後先考えずに衝動的に行動する、めちゃくちゃヤバイ奴。

 最初に「は?」と思ったのは、セーリングのシーン。いきなり

 「地獄に堕ちろ!」

 と叫んでセイターを海に突き落とすキャット。

 急にどうした。

 しかも、彼を救出した主人公に対して

 「なんで助けたの」

 って詰め寄るキャット。

 いやいやいやいや隣にもヨットがあって人が乗っているような沢山の人が観ている中で人が海に突き落とされたら、普通はとりあえず助けようとするっしょ・・・。

 

 キャットがセイターを海に突き落とす→しかし、みんな知らん顔。

 

 ってそんな訳あるかい!

 殺したいなら普通は他の人の目が無い場所でこっそりやるもんちゃうんか。

 

 そして終盤ですよ。

 沢山の大人が命がけのミッションをやって、なんとか世界を破滅から救おうと頑張っているのに「なんかムカついたから」ぐらいの理由であっさり引き金をひくキャット。 

 お前!息子守りたいんちゃうんか!

 大人なんだから作戦のルール守らんかい!世界破滅したらどうするつもりだったんだ・・・。

 

 他にもですね、なぜセイターみたいな、いかにもヤバそうな奴と結婚したのかも謎。確かにお金持ちなんだろうけど、キャット自身も良いとこのお嬢様みたいじゃないですか。だから金のために結婚って訳でもなさそうですし。あり得るとしたら親のビジネスのための政略結婚・・・?

 

主人公のすべり芸

 主人公は、たまに緩いジョークを口にします。

 

 「どうやって死にたい?」「老衰」

 

 とか

 

 「喉を切ってキンタマを詰め込む」「面倒だな」

 

 とか

 

 「次は頭を打つ」キンタマは?」

 

 とか

 *(他にもあった。思い出したらここは追記します)

 。

 これらのジョークに対し、周りの人たちはクスリともしない。

 編集での間もほとんどなく監督のクリストファー・ノーランにすら無視されている感じがしてなんだか不憫でした。 

ゴヤの贋作の謎

 細かいことですが、ゴヤの贋作について。

 まず、なぜわざわざ贋作を2つ作ったヤツを使ってセイターを嵌めようと思ったのか。「オリジナルと贋作が一つずつ」の場合より「贋作が二つ」あったら嘘が発覚する可能性は当然高くなります。なんでわざわざそれを選んだのか。ちょっとお馬鹿さんなのか。結局バレてるし。画家のアレポはどうなったんでしょうか。キャットのセリフから察するに、すでに殺されているか、重傷を負っているのでしょうが・・・。

 次に、もう贋作がバレていて画家も無事ではないのに、そんなことは全く知らずに「良いものがあるぜ」とドヤ顔でもう一つの贋作を渡してきたマイケル・クロズビー(マイケル・ケイン)。めっちゃ無能。

 

流行り物をイジる

 アメリカで人気があるんだろうな〜と思われるものをイジる展開が何箇所かあります。多分クリストファー・ノーランが個人的に「気に入らない」って思っているんじゃないでしょうか。

ベジタリアン

 飛行機乗っ取りのシーンで「機内食、全部ベジタリアンかよ、ゲー。」みたいな感じで出てきます。その前のシーンで貨物用の飛行機だって言ってたはずなのになぜか登場する大量の機内食

ヨガ

 美術品奪還のシーンで、主人公がやたら深呼吸しているのに不審な目を向ける倉庫職員に対し、ニールが「ヨガだよ」と言います。馬鹿にしてんのか。

ブルックス・ブラザーズ

 主人公が着ているスーツを、前述の役立たずクロズビーおじいちゃんが真正面からこき下ろします。良いじゃん、ブルックスブラザース。 

流石にそれは(多分)ない:ニール=マックス説

 ネット上のいくつかの記事に

「ニールはマックスなのではないか」

 という深読み記事が出ていますが、個人的にはないと思います。

 理由は、

  • もしそうなら、例のお守りをマックスが身につけているシーンが入るはずだが、それがない
  • ニールは主人公と「数年後に」”最初の”出会いをするので、年齢的におかしい

 以上の二点。

 ただ、若干捨てきれない点もあります。例えばあのお守りが、実はベトナムのお土産だった、とかそういう事情が出てきたらそれもありえるかな、という。ただ現時点では可能性は薄いと思います。 

物理学の予習は必要か

 要らないです。

 エントロピーとか、ウニャウニャといろいろ説明(というか煙に巻くために)が出てきますが、理解しようと思っても無駄しなくても話の展開を追うことになんの問題もないです。

 なんとなく「時間が逆回転するのね」と分かっていれば大丈夫です。

 作中でも「考えるな、感じろ」ってブルース・リー女性科学者の方が断言していますので、その通りで良いでしょう。

 細かい科学の解説がどうしても知りたい方は、パンフレットに解説が有り、また以下のような記事もあるので参考にしても良いと思います。

 繰り返しますが、別に理解しなくても映画を楽しむことには全く影響ないです。

 

IMAXレーザーGTで観た方が良い?

 可能ならそうした方が良いと思いました。

 筆者は1回目は通常のIMAX、2回目にIMAXレーザーGTで観ました。

 IMAXレーザーGTは通常のIMAXより画面の大きさがこれだけ違います。

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 これだけ違うと、アクションシーンの迫力や没入感にはっきりとした差が生まれます。

 もし2回以上見るのであれば、2回目以降、ストーリーの理解が進んでいる状況でIMAXレーザーGTにすると、画面に集中できる分、満足度が高いかもしれません。

 

とりあえず以上です。

初の10,000字超え記事となりました。

最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました!

 

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