旅の終わり、映画のはじまり

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読書日記 『ネヴァー・ゲーム』

 

ネヴァー・ゲーム

ネヴァー・ゲーム

 

  歴史・科学・サバイバル術などの豊富な知識に裏付けされた緻密なストーリーと、あっと驚くような展開が魅力的なミステリー作家ジェフリー・ディーヴァーの最新作。

 本作の主人公は懸賞金ハンターのコルター・ショウ。キャンピングカーで移動しながら行方不明者を捜索し懸賞金を受け取ることを生業にしている。物語の舞台はシリコンバレーで、巨大IT企業の闇、ゲーム実況、FPSなど、今のゲーム業界・IT業界のトピックを絡めながら、全く先の読めないディーヴァー・ワールドが展開される。一流作家のテクニックをしっかり堪能できる一冊で、興味のある方にはぜひおすすめしたい。

 惜しいなーと思ったのは、ゲームやIT業界周りの描写がかなりステレオタイプ的であったり、真犯人の動機や暴かれる秘密が陳腐だったり、「そもそもそんなことが行われていたらとっくにニュースになっているのでは?」と首を傾げたくなる描写が結構多かったところ。ディーヴァー先生もいろいろ勉強されたのだとは思うが、ちょっと温度感というか、実際にネットやゲームに慣れ親しんでいる世代からすると、かなり違和感があった。

 加えて、ゲームの描写をミステリーに取り入れることの難しさも感じた。こういう分野で面白いストーリーを作るなら、ミステリーよりSFやファンタジーのほうが圧倒的に分があると思った。『三体』にせよ『レディー・プレイヤー・ワン』にせよ魅力的なゲーム描写が他のジャンルにたくさんあるせいで、それと比べてどうしても本作のゲーム描写は面白みに欠けていた。

 どうせならデジタルフォレンジックなどをガッツリ勉強した上で若い世代も知らないようなぶっ飛んだ話を作ってもらえたらなー、なんて思うのは、流石に欲張りすぎだろうか。

 ディーヴァー先生は好きなので、過去作も読み進めたいと思います。