旅の終わり、映画のはじまり

映画、本、ポーカー、中小企業診断士試験など。はてなブックマークやSNSで紹介をしてもらえると喜びます。

『新聞記者』(Netflixドラマ版)

 

 映画版はオチがトンデモ陰謀論に突き進んでいくのが、本当にもったいなく思っていた。それはどうやら自分だけではなかったようで、町山智浩さんの作品紹介でもそのように語られている。

 

 


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 今回は森友学園公文書偽造にしっかり的を絞っており、キャストも豪華になって非常に見ごたえのある仕上がりになっている。冒頭のツイートでも書いたが綾野剛の演技が素晴らしい。ユースケ・サンタマリアの、現実の複数の人物を闇鍋にしたようなキャラクターも最高だ。内閣情報調査室の上司の笑顔の怖さには震えた。

 この作品の素晴らしいとことはこれら役者陣の重厚な演技と、このような現実の政治状況そのものを扱った作品が(外国資本とはいえ)日本で制作され、そして多くの人に見られたということだろう。

 ただ残念に思うのは、フィクション作品としてストーリーが冗長な面があること、そしてやや説教臭さが抜けないところだ。三話ぐらいまでが現実に起こった事件の再現映像のような展開に終始する。お話として面白くなってくるのは4話目ぐらいからで、これでは日本はともかく、世界に配信して海外でも見られるようにはならないだろう。理想をそのままセリフで語るような場面も多い。

 傑作ではあると思うのだが、期待していた以上のもの、観たことのないもの、予想を裏切る何か、そういったものが欠落しているのが本作の惜しいところ。

 このような系譜の作品は今後も作られ続けて欲しい。次回作に期待したい。

 

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【ポーカー】JOPTにひとりぼっちで初参加して楽しんだり戸惑ったりした記録

 2022.1.8-9でJOPT(Japan Open Poker Tour) に行ってきました。参加したのはNLH Main Event。初めてだったのですが非常に楽しめ、day2まで残ることができました。

 私はポーカーを趣味にしている友人がおらず、ひとりぼっちでしたので初参加にあたり色々戸惑ったこともありました。この記事ではそのあたりも含めて、今後初めてJOPTに参加される方の参考になるような情報もお伝えしています。

ポーカー界の有名人がたくさん見れてテンション上がる

 自分が知っている範囲でも、たくさんのポーカー界の有名人が会場にいらしてました。

 自分が見かけたのは、負野さん、りょうなさん、りゅうたろうさん、ななちゃらさん、など。ななちゃらさんはMCやコンパニオンもされていました。異次元のスタイルの良さでした。負野さんも実物は長身イケメンでびっくりしました。りょうなさんも想像より5センチぐらい身長高くて、全体的に皆さんオーラが凄かったです。マサキングさんもいらっしゃったようですが見つけられませんでした。

 有名人にこんなにたくさん一度に会えてしまうのはミーハーな自分にとっては凄く楽しい時間でした。

 

会場の雰囲気が最高

 今回は竹芝のポートホールという新しく綺麗な施設での開催。ディーラーさんやコンパニオンさんの衣装も素敵で全体的に雰囲気の非日常感の演出が行き届いていると感じました。ここでポーカーできるだけで、最高の休日になります。次回もまた絶対参加したいです。

 

ロングストラクチャー

 ここではNLHのメインイベントの話ですが、ポーカー自体も単純にストラクチャーが良く、ブラインドも50分ごとに上がっていきます。サテライトと違って余裕をもってプレイができるので単純にポーカーの体験としても最高です。

 

朝は余裕をもって到着しよう(ウェイティング問題)

 当日のメインイベントのスタートは10時から。しかし受付にどのぐらい時間がかかるのか全く分からない。不安でしたので自分は一時間前には会場に到着。その時点でもぱっと見で50人程度は並んでいました。

 入場開始が九時半ぐらいでしょうか。自分はかなり前の方に並べたため余裕をもって入場。しかし今回は合計1,000人を超えるエントリーがあり大勢のウェイティングが発生していました。権利を持っている全員が同時にプレイできるだけのテーブルは用意されていない模様です。これが次回以降改善されるのかは微妙です。会場のキャパを広げれば会場のレンタル料や人件費が嵩むほか、お金の問題以上にそもそもディーラーやフロアの人員を確保できるかの問題もあります。ですのでキャパを大きく広げるのは難しい。一方でポーカーブームで参加者は簡単に増えていくのでウェイティング問題は今後さらに悪化するのではないかと個人的には思っています。

 ウェイティングは一人飛んだら一人参加、という方式のようです。いったんウェイティングの列にはまってしまうと恐らく長時間待たされます。自分のスタート時のスタックの価値がどんどん減っていきます。ストレスや疲れも溜まります。

 時間が許す限り、一時間以上の余裕をもって会場に到着するのがおすすめです。

料金の支払い

 会場に着くと最初に参加料の支払いがあります。JOPTは参加権利に加えて初日6,000円かかります。内訳は参加費5,000円とドリンクチケット2枚で1,000円。

 入場待機の列には現金払いの列とPayPay払いの列があります。係のかたが看板のようなものを持ってそのことを示してはいるのですが、いかんせんその看板が小さく文字が遠くから読めない。いったん近くまで行って確認する必要がありました。現金払いの列は長くPayPay払いのほうはほとんど人がいませんでしたが、単純に列が二つあることに気が付いていないひとが多かったのではないかと思います。

 

お昼ご飯は時間がないので軽食持参がおすすめ

 タイムテーブルにそれぞれのブレイクの長さが書かれていないため、昼食休憩の時間が十分にあるのか事前に分かりませんでした。これは一番戸惑いました。私は休憩が短いことも想定して軽食を買っていきました。

 結局、昼食の時間は15分。短い・・・。今回の竹芝には施設内にナチュラル・ローソンがあり、会場の外の廊下や屋外で、おにぎりやサンドイッチを急いで食べているかたが大半でした。

 昼休憩の時間は一時間ぐらい取ればいいのにと個人的には思いました。せっかく東京のおしゃれな施設で開催していて会場の雰囲気もよくコンパニオンもいてゴージャスでラグジュアリーで最高なのに、ランチがこれではちょっと勿体ないです。お昼をちょっと優雅にできたらイベントとしての体験価値がより向上すると思いました。

 

温度調整できる服装等が必要(会場寒かったです)

 会場は普通に寒かったです。なのでひざ掛けとか、自分で調整できる服装とかの準備はしていく方が良いです。私は特に足が寒くなりました。

 

クッションはあった方が良い(長時間座るので足腰の疲労がすごい)

 会場の椅子はごく普通のパイプ椅子です。day1を通過するまで10時間座り続けるので足腰が相当疲れました。クッションなどを持参すると良いかもしれません。

 

 また何かあったら更新していきます。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

1,000 hours a year (正月が終わり、本当の可処分時間を意識して生活しようと思った話)

 

 というわけで、もとの勉強法エントリに触発されて「そもそも一年間の自分の可処分時間は何時間?」を定量的に把握するべく、計算してみました。

 大雑把にまとめると、僕の可処分時間は2,000時間/年(月166時間)でした。

 実際はここから人付き合いの時間やらなんやらで半分程度は持っていかれるとすると、実は一人で趣味に使える時間はせいぜい1,000時間/年(月88時間)程度かと。

 意外と多い気もしますが、時間をあっという間に浪費する罠もあります。例えば「SNSで何時間も過ごす」「習慣的に酒を飲んで時間を無駄にする」など時間泥棒的な行動が習慣化すると、宝物の1,000時間も簡単にGone Awayします。去年までの自分は本当にこんな感じでした。特に酒。反省。

 スキルアップも趣味の充実も、時間のマネジメントなしにはできません。今年は可処分時間を意識して、生活を改善・充実させていきたいと思います。

『偶然と想像』

 鑑賞前の「想像」

 「偶然」とはなんだろうか。

 都合のいい「偶然」、悪い「偶然」。「偶然」は、コントロールできない。些細な「偶然」、重大な「偶然」。「偶然」は、予測ができない。

 自分が生まれたことも「偶然」であれば、人類や生命そのものの誕生も「偶然」。宝くじに当たる幸運も「偶然」、突然雷に打たれて死ぬ悲運も「偶然」。

 「偶然」は時に不可逆的に、我々の運命を規定する。

 統計学が扱う不確実性とは未来のことを指しているが、「偶然」とはすでに起こった過去のことを示すのが一般的だろう。

 

 「想像」とはなんだろうか。

 それは人間が頭や心で何かを思い描くことである。「想像」もまた「偶然」と同じように我々のコントロールを超えて時に暴走しうる存在である。

 しかし人間が最終的にコントロールできうる唯一のものも、自身の「想像」である。「想像」は我々を支配する「偶然」に対する唯一の対抗手段である。

 

 「偶然」の対義語は通常、「必然」という言葉である。しかし本作はタイトルで「偶然」と「想像」を対比させることで「必然」から居場所を奪い、否定する。

 

 本作は三部構成となっており、「偶然」と「想像」に関する羅生門形式での語りを意図している可能性も頭の片隅で想像し、鑑賞したい。

 

作品という「偶然」に対峙して

 本作は全部で7つのエピソードとして構想されたもののうち最初の3つを作品化したものであるという。

 タイトルについて色々考察を巡らせていたことが馬鹿馬鹿しくなるぐらい、本作にはストレートな笑いどころがしっかり用意されているし、肩ひじ張ってみるような作品ではなかった。

 最初のエピソードはタクシーの車内でのガールズトーク長回し会話劇だけでも「あるある話」っぽく楽しいが、社内で古川琴音がひとりになりタクシーの運転手に行先の変更を告げてからの「ないない話」へと発展するドライブのかかり方は凄かった。最後の喫茶店のシーンでの印象的なアップからの展開には驚かされた。

 二つ目のエピソードは単位が取れなかった学生がセフレの同級生に依頼して、自分を留年させた教授にハニートラップを仕掛けるという話。独身の男性のキャラクターであれば、若くて魅力的な女子学生が部屋にやってきて女性の方から積極的に扉を閉めたらそれは・・・という「あるある話」が展開しそうになるところ、この教授がわざわざ扉を開けなおすところから「ないない話」に展開しドライブがかかっていく。

 三つ目のエピソードはなぜか若干のSF設定が字幕で語られた後、仙台の町で高校の同級生と再会して家でお茶をするが、実は人違いで、気が付いてもそのまま流せばいいのだが、あろうことかそれを片方がしっかり口にしてしまうところで「あるある話」から「ないない話」への転換が起こり、それが思わぬ化学反応を起こしていく作りになっている。

 本作は120分の鑑賞時間で、ふつうは1回あれば満足できるような目の覚める場面が3回も出てくる点で非常にお得な作品であり、笑いどころも豊富なので思った以上にエンタメ度の高い作品であった。セリフの読み方については棒読みと感じる部分も多く、それは特に「ないない話」のパートに顕著であるので、おそらく意図的なものである。

 私たちの実人生では、ひとつの偶然からこの作品で描かれるほどの果実を得ることは困難である。が、偶然の何かに出くわしたとき、日常のほうの「あるある話」に戻ろうとするのではなく、想像を働かせ「ないない話」の方に踏み出すことができれば、映画も人生も少し何か違うものにできるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

『キングスマン ファーストエージェント』

 

 面白かったのだが、思っていたのと違った。

 

 本作は現実の第一次世界大戦を題材にしているため当たり前といえばそうなのだが、この映画はキングスマンというシリーズの過去のテイストとはかなり異なっており、リアルな反戦映画に仕上がっている。塹壕から兵士が突撃して全員があっけなく秒殺される描写は乾いた演出で不気味だったし、レイフ・ファインズの息子の上官が目の前で銃殺されるナイトシーンは物凄く臨場感があった。同じく第一次世界大戦を描いた『1917』と比べても遜色ないどころか、同作が疑似ワンカットとロジャー・ディーキンスの撮影により幻想的な仕上がりになっている分、キングスマン ファーストエージェントのほうが臨場感や生々しさという点では勝ってさえいるのである。それほど戦争映画・反戦映画としてのクオリティは高い。

 本作を理解するために予習をするのであれば、過去のキングスマン2作ではなく、『1917』もしくはピーター・ジャクソン監督の『they shall not grow old』を薦めたい。のちの世から見れば悲惨極まりないこの戦争に、レイフ・ファインズの息子はなぜ進んで参加していくのか、そして戦争の実態がどうであったのか、理解が深まることと思う。

 補足として、日本ではあまり有名ではないと思うが、本作には実在したイギリスの軍人のキッチナーという人物が登場する。演じているのがGOTの悪役タイウィン・ラニスターで有名なチャールズ・ダンスなので、キッチナーを悪役と勘違いしてしまったが、この人物はイギリスの英雄であって本作の悪役ではない。それを知ってみると話がより理解しやすいと思う。

 思っていたのと違った点は、荒唐無稽なガジェットや悪趣味なギャグといった前2作のチャーミングな部分が殆どなかったことだ。ラスプーチンとの戦闘の場面はそれに近かったのだがそれも中盤で終わってしまうため、キングスマンのテンションで劇場に足を運んだ割になんだか重いものを見せられたな、という印象はどうして残った。

 エンタメとして致命的だなと思ったのはラスプーチンレーニンヒトラーを操る黒幕に大物感が全く感じられなかったこと。スパイ映画との比較でいえば007のスペクターは手下が全員無名だから成り立つが、本作の場合は世界史の超有名どころが手下なので、黒幕の見せ方に工夫が必要だったと思う。なんなら正体を見せないとか、だれが黒幕なのか分からない名探偵コナン方式でもよかったはずである。

 ラストにヒトラーが登場し続編を匂わせていたが、題材的にいよいよシリアスにならざるを得ず、果たしてこのシリーズでそれをやる意味があるのかという疑問はやはりぬぐえない。

 

 

『ラストナイト・イン・ソーホー』絢爛で淫らな街に描いた、歪な魅力

今回紹介する映画はエドガー・ライト監督最新作『ラストナイト・イン・ソーホー』

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エドガー・ライト監督

 エドガー・ライト監督はイギリス出身の男性映画監督。

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 サイモン・ペッグニック・フロストのコンビで『ホットファズ』『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』などオタクな主人公たちが大活躍する映画を作ってきた監督。直近ではアンセル・エルゴートを主演の『ベイビー・ドライバー』で大きな注目を集めました。

 この監督の作風の特徴は、ひとつの映画の中に複数のジャンル映画の要素を同居させるのが上手ということです。

 たとえば『ホットファズ』ではコメディー×サスペンス×ホラー×アクション。『ベイビードライバー』ではノワール(犯罪映画)×カーアクション×ミュージカル。

 もう一つの特徴は主人公に対しても悪役に対しても目線が優しく、どんな話であっても緊張感よりは居心地の良さを感じさせる作風であるということです。

 

 本作『ラストナイト・イン・ソーホー』では果たして・・・?

主演のひとり トーマシン・マッケンジー

 ダブル主演の一人目はニュージーランド出身のトーマシン・マッケンジー

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 『Leave No Trace 足跡はかき消して』という映画で戦争のPTSDに苦しみ山に引きこもって暮らす父と懸命に生きる娘のトムを演じて世界的に注目された女優さんです(この作品はアマゾンでレンタルできます)。

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 その後、タイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』で囚われたユダヤ人の少女役を演じて一躍トップスターの仲間入り。

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 ギリシャ彫刻に命を吹き込んだようなウルトラ正統派美人で、演技力も素晴らしいです。額が広く知的で聡明な雰囲気があります。目がぱっちりしていてとても大きく、めちゃくちゃキュートでもあります。生きているのに瞳孔が開きすぎているように見える時があり、それがこの世のものではないような神々しさ、あるいは若干のサイコっぽさを醸し出すときもあります。(筆者はいまこの女優さんが一番のお気に入りです)

もうひとりの主演 アニャ・テイラー・ジョイ

 ダブル主演の二人目はアニャ・テイラー・ジョイ。Netflixの『クイーンズ・ギャンビット』で世界的に人気のある女優さんです。

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 彼女の特徴はその目力と豹などの猛禽類を思わせる野性的なセクシーさであると思います。額が狭く、その割に目が大きすぎて顔の半分が目でできているような印象があります。トーマシン・マッケンジーが古典的な正統派美人とするなら、アニャ・テイラー・ジョイはかなり現代的な美人の女優さんといえると思います。

本作の舞台 1960年代イギリスの文化

 大ヒットドラマ『ダウントンアビー』でも描かれるようにそれ以前のイギリスの社会は抑圧的な階級社会でした。

 しかし第二次世界大戦後の急激な経済発展と資本主義の大量消費文化の影響を受け、1960年代には社会の規制の価値観を打ち破る、革命のスピリットを持った若者文化が爆発することになります。

 そんななか、イギリスのロンドンは「スウィンギング・ロンドン」として音楽やファッションなど世界の若者文化のメッカの一つになっていきました。それらは現代の我々にも影響を与えているものが多く、一番有名なところではビートルズ。そしてジェイムズ・ボンド。ミニスカートなどもこの時期に登場しています。

 同時に文化的な爆発は男女ともに性の解放や、ドラッグの普及などにも絡んできており、本作は当時の若者文化をどのように描くのでしょうか・・・?

本作で使われる1960年代の音楽たち

 1960年代のイギリスのPOPSが流れまくる本作。一番の有名どころは予告編でも使われている「Downtown」でしょうか(アニャ・テイラー・ジョイは歌もいいですね)

 

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  この時代の音楽はとにかくメロディがキャッチーで歌詞もシンプルで分かりやすい。聞きやすいけど、どこか切なさや寂しさを漂わせているのが大きな特徴かと思います。映画評論家の町山さんがプレイリストを作ってくださっていてありがたいです。

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観る前の注意点

光の点滅

 本作は光の点滅などにより光に敏感な体質の方は注意が必要です。上映前に警告が流れるのですが、着席して上映が始まるタイミングで警告を流しても遅いのでは?と思いました。

性暴力描写

本作にははっきりと性暴力描写が出てきますので、苦手な方は避けた方が良いかもしれません。

 

 監督紹介のパートで「ひとつの映画の中に複数のジャンル映画の要素を同居させるのが上手」と述べましたが、本作はミュージカル×青春映画×ニューロスリラー×サスペンス かと思いました。

感想

 

 公開二日目に見に行きましたが都内の劇場は満席でした。

 

 本作の魅力はいろいろな要素で語ることができると思います。それはファッションであったり音楽であったり、それぞれが思い入れているものによって変わってくるのが自然なのでしょう。

 私にとっての本作の魅力は主演女優二人、特にエロイーズを演じるトーマシン・マッケンジーの熱演をずっと見ていられることでした。冒頭のダンスのシーンはカメラがかなり近く、まるで3DのVR。超至近距離で彼女を観ているような、本当にエロチックな撮影だと思いました。

 その後も監督はトーマシン・マッケンジーの衣装、髪型、表情をどんどん変化させていきます。彼女の魅力を余すところなく撮りたい、という欲望がスクリーンから駄々洩れのように感じました。当初はエロイーズを演じる予定だったアニャ・テイラー・ジョイを含めて、ほかのキャストのルックスがそこまで変化しないのとは対照的です。

 本作は「1960年代の女性の解放の裏にあった女性の搾取と向き合って、女性の搾取構造を打破する」というテーマとは裏腹に、トーマシン・マッケンジーの魅力にエドガー・ライト監督自身が圧倒されて引きずり倒されてしまった結果、監督自身が「顔の消された男たち」になってしまいかねないギリギリのラインで作られた、かなりいびつな作品になったと思います。

 冒頭に主人公が幻覚を見ることが普通のこととして描かれており、ホラー映画としてはたいして怖くありません。

 露骨な性暴力描写は性的に消費されうるバランスで作られており(ここは『プロミシング・ヤング・ウーマン』と全然違う)、それ以外にも主人公と付き合うのが監督の過去作に出てきそうな冴えない優しいだけの男であるところなど、あくまでオタク、ナード的男性目線の強い作品であり、フェミニズム映画としても微妙です。

 

 それでも自分はこの作品が大好きです。主演二人の魅力と熱演、極力CGを使わない撮影など非常に見どころの多い作品であることは間違いありません。メイキング映像ではダンスシーンの練習風景などが見られますが、かなりがんばってアナログな撮影手法を取り入れています。

 

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 褒めていいところばかりでないのは前述の通りなのですが、それでもこの作品には魅力が詰まっており、エドガー・ライト監督には「ありがとう」と言いたいです。

 それにしても、憧憬の対象に近づき過ぎることで見る・見られる関係が逆転し、ましてそれに殺されそうになるなんて、いやはや身につまされる話です。

 

参考文献

・劇場パンフレット

 

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新型コロナウイルスワクチン モデルナ 一回目接種の日記

 地方自治体や職域接種の日程が遅かったため、自衛隊が運営している大手町の大規模接種センターで新型コロナウイルスワクチンの接種をしてきました。メーカーはモデルナです。

 一回目の接種とはいえ、副反応で発熱なども考えられます。事前にロキソニンやゼリー飲料、スポーツドリンクを買い込み、籠城の準備を万端にしたうえで接種日を迎えました。ワクチンは積極的に受けたい派の私でも、前日の夜からすこし緊張。当日は必要以上に早く目が覚めてしまい、そわそわするので少し早めの電車にライドオン。気を紛らわそうと詰将棋のアプリをしていたら乗り換えの駅を乗り過ごして少し焦る。早めに出ておいてよかったです。普段から絶対に遅刻しない予定を組んで、それよりもさらに早く動く習慣があると、こういう時には強いのです。

 さて、たどり着いた会場は大手町駅から歩いてすぐのところにありました。便利。大手町駅についたらホームの案内板にもラミネートされた大規模接種のご案内が貼ってありますし、駅の出口すぐのところに係員がいたので迷うことはないと思います。

 大規模接種会場を外から見た様子は、さながら災害現場や野戦病院のようで、非日常感のある空間に不謹慎ながら少しわくわくしました。同時に緊張も高まります。

 少しビビりながら進むと、スタッフの方が手際よく案内してくれました。サンキュー。そこからのオペレーションは・・・お見事。入口の案内から検温、書類の確認、問診、接種、次回の予約、待機時間、帰りの誘導まで非常に効率的に運営されていて心強く感じました。ノーストレス。人員もかなりしっかり人数を割いてくれているように感じました。毎日毎日同じことの繰り返しでスタッフのかたは大変だと思います。本当にありがとうございます。

 そして、実際の注射自体にはほとんど痛みを感じませんでした。インフルエンザの予防接種の十分の一以下ぐらいのイメージです。注射が苦手な方でも、きっと大丈夫なのでためらわずに受けたほうがいいと思いました。

 ワクチンを打ち終わった感想としては、一年以上恐れて逃げ続けてきた憎き新型コロナウイルスの欠片みたいなものが自分の肩にいま入っていることを不思議に思いました。ちょっと現実離れしていて、SFっぽさすら感じました。安心感とかではなく・・・。むしろ今までで一番コロナウイルスを身近に感じたのかもしれません。

 

 接種後は大手町から日比谷に移動してデリーでカレーを食べてからプロミシングヤングウーマンを・・・観たかったのですが、デルタ株の感染拡大が怖すぎたので、カレーも映画もなしで、家に直帰しました。

 帰りの電車の中でウーバーイーツからランチを注文。帰宅後シャワーを浴び終わったころにお弁当到着。食後、だいたい接種から四時間程度経ったころ、腕に痛みを感じ始めました。軽い筋肉痛程度の痛みで日常生活に支障はなし。接種会場で飲酒と長風呂、激しい運動はNGと言われたので夜はお酒を控え、シャワーだけ浴びて就寝。このまま大変な副反応の出ないことを祈りつつ・・・。

 そして翌朝。肩の痛みがやや広がった程度でそれ以外の目立った副反応はなし。しかし念のため家でゆっくりしていました。

 接種後二日目、すべてが副反応かは不明ですが、お酒も飲んでないのに少しおなかを下していたり、普段ほど食欲がなくコメやおかずを残してしまったり、三連休の二日目なのにあまり元気がなくて疲れるのが早かったり。普段通りの体調とは少し違いました。副反応としてはかなり軽いほうだとは思うのですが、いままで予防接種で体調の変化を感じたことがなかったから自分は大丈夫、という根拠のない自信の根拠のなさを痛感。念のため、今日もお酒はまたお預けに。お風呂は軽く湯船につかりました。

 明日はどうなるかな・・・。